日本のサッカーと世界のサッカー

 2006年9月、AFCアジアカップ2007予選のイエメン
戦直前のトレーニングで日本代表ぱ”インで巻くシュート”と”
アウトで引っ掛けるシュー”の2つの種類の蹴り方をテーマにシ
ュート練習を行いました。オシム監督は後日その練習を振り返っ
て「あれはよくなかった。下手だった。なにか欠けているところ
はあると思う。それはシュートだけでなく、スキル全体に関して
言えることだ。手以外の体のあらゆる部分をコントロールできる、
いろいろな種類のボールを止める、蹴る、切り返すことができる。
そうしたことができる能力があれば良い。日本ではリフティング
のように、レクリエーションの一部としての練習はされているけ
れど、実際のプレーでそうしたスキルは生かされていない」と話
しています。

 『世界レベルのサッカー』と『日本でよく見かけるサッカー』
とでは様々な違いがあります。それは1つではなく、プレーヤー
のフォームであったり、試合の展開の仕方であったり、トレーニ
ングのやり方であったり、あらゆる場面で見られます。一つひと
つを切り取って考えるとほんの少しの差なのかもしれませんが、
それらが積み重なると大きな違いとなっているようです。

 たとえばキックのフォームが違います。日本では「ひざを素早
く伸ばすことによってボールを蹴る(=ひざから下の鋭い振りで
蹴る)」というケースが多いようです。しかし、世界での蹴り方
ではほとんどひざは動かしません。どちらかというと腰のひねり
をうまく使って足で蹴るというよりは腰のひねりで蹴るという感
覚です。

 また日本では”パスはインサイドキック”“シュートはインス
テップキッグ”とこの2種類の蹴り方だけをトレーニングする場
合が多いようですが、世界のサッカーはいろいろな部位のキック
を使い分けています。

 スキルに関しても少々違います。部分的に切り取るトレーニン
グが多い日本では実践する場面が少ない『ボールの奪い合い』や
『積極的なドリブル突破』という技術を海外ではミニゲームの中
で自然とトレーニングします。さらに日本では直線的に走るシャ
トルランで走力を、持久走で体力を鍛えることが多いようですが、
海外ではフェイントを使った動きを入れながらゲームの中で走力
や体力を磨きます。

 また考え方も社会的背景などの違いからか、日本と世界では異
なるようです。日本のサッカーの特徴は基本となる考え方があり、
トレーニング内容も緻密で詳細まで決まっています。ですからフ
ォームなどは似ていることが多いのです。一方、海外の場合は自
由にプレーする場合が多いようです。特に南米やイタリア、スペ
インといったラテン系の国は世界の中でも自由度は高いようです。

 この第5章では日本のサッカーと共に海外のサッカーについて
も紹介しています。どちらが正しくて、どちらが間違っていると
は言いません。しかし、「今までやってきたものとは違うサッカ
ーがある」ということを知るのは悪いことではないはずです。「
これは使えそうだな」というものがあったら採用してみてくださ
い。

 また、よくわからないものがあったら、一度実践してみてくだ
さい。新しい発見があるかもしれません。

オシムの練習 154〜155頁。

http://www.oct-net.ne.jp/isotaku503/Yofuke/Article/2016-01-29_OSIM-Training_154-155.jpg

Isogawa Takuji 2004