今年2月に日出生台で行われたアメリカ海兵隊の実弾砲撃演習
この事実が明らかになったのは、米軍内部の機関誌「オキナワ・マリン」1998年12月4日号の記事。宮城県王城寺原での昨年11月の実弾砲撃演習の際、核・生物・化学兵器による攻撃に対応した訓練(NBC訓練)を行ったことが記事として書かれていたことから、この事実が明るみに出ました。
問題の記事は 'KIller' Kilo wraps up main land fire missionのタイトル。意味は「'殺し屋'ケリー部隊、本土での訓練を終了」。(この「殺し屋」と付けられた「ケリー部隊」は、今年の2月に日出生台に来た部隊)
記事は「演習の水準を上げるためにケリー部隊はシナリオにNBC攻撃を追加した」とあり、その詳細を記述。この新聞報道を受けて、福岡防衛施設局に、今年2月の日出生台での米軍演習の際にも「NBC訓練」を行ったのかどうか、公開質問状を出したところ、福岡防衛施設局の返事は、
「通常の訓練の一環として、核・生物・化学兵器による攻撃を受けた場合を想定して、防護服を着用して訓練を実施したとのことである」とNBC訓練の実施を認めました。
国は、この米軍実弾演習が決定される際に、移転になるのは「155ミリ榴弾砲の実弾砲撃訓練だけ」と繰り返し説明をしてきました。今年1月25日の県庁での住民と県との交渉の際にも、住民が「もし155ミリ砲以外の演習をおこなったら、大分県としても反対しますか」と聞くと、県側は「155ミリ以外の演習を行えばもちろん反対する」と答えました。
また平成9年6月30日に大分県と地元3町が福岡防衛施設局長宛に申し入れた「訓練内容、治安、安全対策等に関する要求書」において、「訓練内容」の第1項で次のように申し入れをしています。
移転実施される訓練は、これまで沖縄県道104号線越えで行われてきた155ミリ榴弾砲の射撃訓練のみとし、それ以外の訓練はいかなることがあっても実施せず、訓練が拡大されることのないこと。 |
しかし、今回明らかになったNBC訓練について、防衛施設局は「米軍は通常の155ミリ砲撃演習の一環と言っている。問題ない」と米軍の開き直りを追認。大分県と地元3町もこの状況に対して、なんの抗議もしようとしていません。
さらに問題なのは、米軍のNBC訓練について、福岡防衛施設局がこれを知ったのは、マスコミが問題として取り上げた「今年の8月」「宮城県王城寺原でのNBC訓練があきらかになって、米軍に問い合わせた時点」だったということです。つまり、2月に日出生台での米軍演習の頃には、そばにずっといた福岡防衛施設局でさえも、米軍がNBC訓練をおこなったと事実を知ることができなかったのです。
防衛施設局が知らなかったぐらいなので、当然、大分県と地元3町も密かに行われたNBC訓練について知るわけがありませんでした。
米軍演習を規定している「米軍使用協定」の協定当事者である大分県、地元3町、福岡防衛施設局の4者とも、米軍が行ったNBC訓練の事実を把握していなかったということは大変な問題です。「米軍使用協定」の内容が米軍によって守られているかどうか、協定当事者によってチェックすることができないということが明らかになったからです。NBC訓練のような防護服とガスマスクを装着する演習にも気づかない状態で、米軍演習が協定の規定内で行われているかどうかの検証などできるわけがないからです。