山行記  三俣西峰(アーカイブ版)  H23.2.16 晴・地吹雪  R7.2.18 再アップ

  
  (トップからの続き・・)


除雪車基地に戻り駐車し、午前3時に取りつく・・。

西空に輝く十八夜の月に照らされ、辺りは明るい・・。

硫黄鉱山道の吹き溜まりは相変わらず凄かった・・。

2メートル以上はあろうか・・、右に寄ったり、左に寄ったりしながら

乗り越える様に歩く・・。

砂防ダム渡渉点を過ぎた頃から風が強くなってきた。

登路の吹き溜まりも結構激しく、所々分からない箇所がある・・。

今日は珍しく南からの風・・。

硫黄山の噴煙がこちらに向かって飛んでくる・・。

段々と吹雪が激しくなり、雪が顔にパチパチと当たり痛くなってきた・・。

一頑張りでスガモリ越着・・。

ここはもう吹雪ゴーゴーの嵐状態だった・・。

小屋の中は相変わらず天井まで届きそうな吹き溜まりで埋まり

休憩するスペースは全くない・・。

どこか隠れる所はないかと、探しまくるが・・ない・・。

冬場になるとつくづく思う・・。

このスガモリ越の小屋は冬場は何の役にも立たない・・。

何とかしてほしいものだ・・。

ここで防寒対策だ・・。

ダウンインナーと防寒ズボンと靴用ホッカイロで装備完了・・。

西峰稜線への登りに取りつく・・。

ゴーゴーの吹雪だ・・。

正規の登路は完全に埋まり消えていて、それらしきスペースを登るだけだ。

新雪の下に前回の固く凍った雪があり、それを踏むとズルズルと滑り落ちる・・。

私はアイゼンを持ってないのでどうにもならない・・

靴先で氷を蹴飛ばし、キックしようとするが、なかなか難しい・・。

下を見ると、結構な急斜面で、転倒でもしたら下まで転げ落ちてしまう・・。

一歩一歩だが足先も痛くなり、疲れてしまった・・。

新雪下の氷は手強いので、止めて横道に入る・・。

すると今度はズボズボと腰まで嵌まってしまう・・。

ラッセルだ・・。

私は非力なのでラッセルのスタミナはない・・。

10歩も進まないうちに心臓がパクパクだ・・。

こんな所で心臓麻痺でも起こしたら全巻の終わりだ(苦笑)・・。

雪から脱出し、横になり上を向いて休憩・・。

北千里ガ浜方面からゴーゴーと吹雪が飛んできて、顔を当たり痛い!・・。

寝たまま横になっていると、帽子の庇に雪が付着し霧氷みたいになる・・。

身体も吹雪で段々と白くなっていく・・。

「ダメだ!・・、このままじゃ埋まってしまう!・・」

怖くなり、ガバッと起き上がり、再びラッセル・・。

周りの灌木に掴まりながら助けて貰い、何度も休憩をしながら

まさに這う様にして、やっと稜線に出た・・。

稜線上の大きなケルンが見えた時は本当に嬉しかった。

ケルンの下に座り込んでしまった。

でも、いつも思う・・。

厳冬の冬山で、それも暗闇の吹雪の中で、

それもいい年寄りがこんな無茶をしているなんて・・。

やはり奇人変人としか言いようがない・・。

家族には絶対に知られない様にしないといけない(苦笑)。


東空はかなり明るくなっていた。

大船方面には雲はなく、スッキリだ・・。

中岳、天狗ガ城方面は時々ガスがかかっている・・。

お目当ての星生北斜面は思った通りトロトロだ・・。

「やった!・・」

しかし、時々ガスがかかる・・。

稜線の上は全面が「シュカブラの海」だった・・。

こんなに広く変化に富んだシュカブラの海は初めてだ・・。

急いで西峰山頂に向かう・・。

シュカブラの上を歩き、足跡を付けるのがもったいないくらいだ・・。

山頂は強烈な烈風・・猛烈な地吹雪だ・・。

北千里ガ浜方面から台風の様な烈風が吹いてくる・・。

時々の突風で飛ばされそうだ・・。

星生北斜面のトロトロを眺めていると、吹雪混じりの突風で

防寒着のフードが飛ばされ、頭から脱げてしまう・・。

耳当ての付いた帽子は紐でしっかりと結んであるので大丈夫(苦笑)・・。

今日は猛烈な烈風なので鼻水も飛ばされてしまう(苦笑)。

しかし、今日はここに素晴らしい世界が待っていた・・。

山頂に立ち、大船方面を見ると、手前の西峰稜線のシュカブラの海が

烈風に飛ばされ、雪煙が舞い上がっている・・。

圧巻はその雪煙の色の変化だ・・。

大船の右肩から太陽が顔を出した・・。

辺りが一斉にピンク色、オレンジ色に変わっていく・・。

今日はくじゅう全体に強風が吹いている様で、

スペクトル光線の色がいろいろな色に変わる・・。

飛ばされるガスや雲を通ってくるので、スペクトル光線は色が変わる様だ・・。

そのために雪煙の色が短い周期で変化する・・。

ゆらゆらと揺れる様に色を変えながら雪煙は飛んで行く・・。

まるでダンスを踊っている様に・・。

「幻想・雪煙の花園」・・だ。

私はこんな光景は初めて見た・・。  

これがトップ写真の光景である・・。

今日は思いもしない苦労をしてここまでやってきた。

しかし、苦労すれば報われる・・。

くじゅうの女神は素晴らしい景色を準備していてくれた・・。

今回は山行そのものは苦しかったが、

思いも寄らないサプライズに遭遇出来て

思い出に残る記念山行となった。

九重に行けば、どんな苦労があっても、

くじゅうの女神は必ずお土産を用意してくれている・・と改めて思った。

 
   感動のショット(その2)です・・。
   まさに「幻想・地吹雪舞う」・・です。
   烈風が強くて立っていられないので、しゃがんで一時間近く眺めていた・・。
    

 
   九重連山の目覚め・・。
   今日は珍しく南からの風・・。台風並の烈風が吹いてくる
   しかし、身が清められる景色だ・・。 
   

 
  今回お目当ての星生北斜面のトロトロ・・。
  本来の狙いは、山頂直下の山襞のピンクの光と影だったが今回はお預けとなった)。
  でも、この写真は、烈風が凄いので、腹這いになり、
  カメラを岩に押しつけてブレを止めてシャッターを押した・・。

    

 
   私の好きな厳冬の北千里ガ浜・・。
   法華院山荘に保存されている巻物「九重山記」によれば、
   この巻物の作者・芳梅聞が当時の法華院白水寺に登詣した時に
   白水寺・下宮(今の法華院山荘)から、この写真に見える中宮を通り、
   スフィンクス岩を通り、久住分れに出て、中岳直下の上宮にお参りした。
   1770年頃(江戸時代中期)の事である。


 
   スガモリ越の避難小屋・・。
   吹き溜まりが一人で占領して休憩している(笑)。
   愛の鐘にも近づけない・・。
   この小屋の管理役所にお願いします!・・。
   吹き溜まりでなく、人間が休める様に改造して下さい!(笑)・・。


       ご訪問いただきありがとうございました・・