九重で始めて見る事が出来たヤマシャクヤク(H17.5月撮影)
三俣山のモルゲンロートを見る為に平治岳に登った帰り道に見つけた。
薄暗い林の中に咲いていたが、かえってシットリとした感じが出て私としては満足の1枚・・。
花びらに触ると今にもハラハラと剥がれ落ちそうで、
1度触ったら2度とは触れないという感じがした・・。
アケボノソウ(曙草)・・
私は最初の頃、この花の事は知らなかったが、何となく気になっていた。
「アケボノソウ、あけぼの草、曙草・・」と何回も口ずさんでいるうちに
昔の記憶が戻ってきたのだ。
昔、高校時代に国語の古文で習った「枕草子」の冒頭の「春は あけぼの・・」である。
私は高校時代の教科書は全部捨てたが、何故か国語の教科書だけは大切に取っている。
今でも私の書棚にある。
何十年かぶりにそれを見てみた。
「春は あけぼの・・」・・ あった・・。

 『春は あけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは、すこしあかりて、
   紫だちたる雲の細くたなびきたる』・・

清少納言だ・・。
これが私の頭の隅っこに残っていて、「アケボノソウ、アケボノソウ・・」と
何回も口ずさんでいるうちに、その隅っこの記憶に響いて昔の記憶が戻ってきたのだ。
そして私は驚いた。
このフレーズは、春の夜明け前、白々と明け行く山々、赤くたなびく朝焼けの雲・・の
美しさを歌ったものだったのだ。
そして、くじゅうの朝な夕なに魅せられ暗い夜道を歩き、くじゅうの黎明、あけぼの・・に
逢いに行く私の心情と重なったのだ。
別に私と清少納言の心情が重なった訳ではありません(笑)。
でも、私は嬉しくなってしまった。アケボノソウが仲介となり、私の昔の記憶が蘇り
そこに「あけぼの、黎明の美しさ」を詠んだ昔の歌人がいた・・。
これが嬉しかった。
そういう意味で今回はアケボノソウとは運命の出逢いとなった。

運命の出逢いに相応しくこの花は何とも言えない雰囲気を持っている。
この花は夢を感じさせる・・。
花図鑑などを見て私なりの印象を考えてみた。
 五枚の花びらは広がる夜空、黒紫の斑点はきらめく星座群・・
 黄色い斑点は眩しく瞬く明けの明星・・
 真っ直ぐに伸びた五個の雄しべは夜空を流れる流れ星・・。
私にはそんな風に見える・・。
花は小さいが、まるで満天の星空を思い起こさせ、広大な宇宙をも感じさせる。