正月はやはり山のいで湯だ!   矢野誠治
 正月からこっち、温泉びたりである。トライアスリートのはしくれとしてもトレーニング後のアフターケアならまだしも、単なる遊びだから始末が悪い。ポンポコリン返上どころの話じゃない、温泉とビールはベストマッチング。ますます下腹部のみシェイプダウン(こんな言葉あったっけ?)

 とまあ、あいかわらず「酒とバカの日々」をおくっているこのごろであるが、ここ最近の入湯記録を披露することとしよう。まず1月2日、阿蘇の垂玉温泉と地獄温泉。折からの秘湯ブームと正月休みのせいか、よくぞここまでという感じの人出。数年まえまでは知る人ぞ知る田舎の湯治場だったのが、いまでは東京ディズニーランドなみ!(というのは大袈裟だし、行ったこともないけれど)特に地獄温泉の『すずめの湯』はわたしでも躊躇するくらいの泥水風の完全露天の混浴なのに、バスタオルを巻いたバカギャルが「ワーッキャーッ」と平気で入ってくる。浴槽をまたぐ時微かにのぞく○○にこっちの方が赤面してしまう(ラッキー!)くらいで、せっかくのお湯もゆっくり楽しむ暇もない。事実『地獄温泉』と聞けば、いまでも××××××××(おゆぴにすと編集部より、この部分は社会的に不適当と思われますので割愛いたします)しか思い浮かばない。

 さてそして翌日。帰省中の栗秋氏とさそいあい黒川温泉と寺尾野温泉をせめた。黒川は御馴染みの湯であり想像通りの人の多さ。俗世間の噂話(悪口ともいう)をしながらひさびさの長風呂をきめこむ。そして次に行った小国町寺尾野の共同湯がすごい。ここは5万分の1の地形図に温泉マークがあるのみ。栗秋氏の嗅覚だけでさぐりあてた共同湯でグレードは最高位。おそらく一般の人には絶対に情報が入るはずがないはずなのに、なんと長崎ナンバーのギャル(残念ながら30代半ば?)に遭遇。しかし、あまりにもハイセンスな男性二人に気後れしたのか混浴でもないのに外で待機。こっちは期待しつつビール片手にまたまた長風呂となってしまった。確かに入口は男女別とはいえ、境は薄い板一枚、しかも湯面下はそのまますどうしという最高の設計であるので、無理もないか?アンラッキー! 日本の正しい休日はこうして、お湯につかって過ごすにかぎるのだ。しかも、そしてついには氏の実家(日田市)にまで乱入しガメニを肴に新年会!となってしまい、正月草々、あぁまた酩酊…。

 さてそして1月19日は『6・WHEEL・CLUB』(我がショップ主宰の東郡を中心にアウトドア(で飲む酒)を楽しむ会)発足イベントとして「MTBレース観戦と湯けむり探検隊別府をいく」という企画で、リックスプリングバレーでのMTBレースにでる仲間を応援し、近隣の温泉をMTBで巡ろうというものだ。レースはエントリーしていたにもかかわらず急遽欠場のサブスリー脇水のゼッケン(なんと1番)を拝借し、またまた飛入り出場、結果は……。よく整備された常設コースのため、なかなか楽しめる。泥だらけになりながら遊び、年がいもなくはしゃいでしまった〔リックにもいい露天風呂があるが(青雲の湯)宿泊者用である。以前無断入盗(湯)したことがあるが夏の夜中が最高で、特に月夜なんぞ最高のシチュエーションである!リックさんゴメンね〕。

 同行メンバー全員で3月のエンデューロ目指して試走の後、たいして疲れてもいないのに疲労回復とばかり『塚原温泉』へ。ガキどもは最初は「きたねー」なんぞといってたものの、無理やり放りこめば、後はいっぱしのおゆぴにすと気分!すぐに「ワイワイキャッキャ!」となるしまつ。しかしのぼせないうちに上げて次へ進む。

 さてお次は本日のメインイベント『鍋山の湯』。道路の崩壊がひどいので途中に車をデポし、ホカ弁とビール(5g)をリュックに詰込みMTBでアプローチ。程よく汗をかいたころガレ場の中に突然立派な露天風呂が現れた。まずは腹ごしらえと弁当をひろげたところ、突然ギャル3人が登場。お先にどうぞとゆずったものの。おじさんたちの視線は眼下にひろがる別府の町並そっちのけで枯草の向こうに釘付!しかしなんとも残念なことに水着を着用している。おじさんたちはしきりに「風呂に入るのに水着なんぞもってのほかだ…」とか「混浴の女性の年齢制限は30までにしろ…」とか勝手な事をわめきつつ(他人にはラリルレロとしか聞こえなかっただろうが)入浴前にはすでに早くも残りのビールは1gとなってしまっていた。

 ギャルが上がってやっと入った湯の中でのビールと空の青さは最高!これぞ山のいで湯メリット5。しかしただひとつ残念なのは来るたびに増えるゴミの多さ、とくにアキカンが目につくのだ。ゴミを捨てるなんぞ水着で風呂に入る奴より最低だぞ! それと4WDオタクにもひとこといいたい。走るフィールドを求める気持ちは同じオフロードバイカーとして分らないわけではないが、ところかまわず我がもの顔で走り回り、静かないで湯を楽しんでいるすぐ脇で大きな音をたてるのは暴走族と少しも変わりないでばないか。自然を愛しより深いところまでわけいるためのギアとして4WDを選んだんじゃないのか? 時代はローインパクト!MTBにしろってんだバカヤロー!

 文句はこれくらいにして。次は『へびん湯』へとダウンヒル&ヒルクライム。こここそ恐らくだれもいないとおもっていたら、すでにおっちゃんが3人いてガックリ。ここは竹やぶの中の川(というより溝と言ったほうがちかい)がそのまま温泉になっているところで、ワイルドさでは一番。この時期は温度が低く、みんな尻込みし私のみ入湯となった。 この後『とびの湯』『白湯』とつづく計画だったが時間の関係でカット。アイアンキッズたちも「もっとはいりたい」と名残おしそうだったが次回また来ようと約束したので、2月の企画は「霧氷と温泉めぐり」にしようと計画するが、予定は未定であって決定ではなかった。

 この後1月中に入った温泉は『滝瀬』『壁湯』『奴留湯』『杖立』『天瀬』といったところ。おゆぴにすと(この名を聞いたことのある大分CTC会員も少なくなっただろうが、大分のトライアスロンの元祖ともいえる挾間、高瀬、栗秋氏らがいにしえの昔、女風呂を覗いてはそのエロチシズムのきわみを文章に止どめ、女体の神秘についての考察をライフワークとし、それを老後の楽しみとしていたけしからん団体である)ジュニアとしては、一日も早く正会員に昇格すべく温泉道を究めているのであるが、おゆぴにすと自体の活動が住宅ローンの返済や、家族サービスや、仕事の延長と自分勝手に解釈した酒席等々の理由で、あまり行われていないようであるのが寂しい。『おゆぴにすと』ならぬ『おすぺにすと』としてわたしがリードしなければと思う今日この頃である。          (平成4年1月)

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